
その1
曇り空を狙って。撮影は8月24日。

その2
早朝に小雨の降った朝、三千院はまだ目覚めたばかりだった。朝のお勤めの読経が遠くから響き、ようやく動き出した。

その3
苔むした石灯籠の上には、きっと既に大地に溶け込もうとしているだろう蝉の抜け殻。蝉はこれから静かな眠りに就こうとしている。

その4
苔むした庭には、秋の訪れを告げる秋海棠とヤブラン。きっと今朝の雨で目を覚ましたはずだ。

その5
ガラスに映り込む姿を見ている秋海棠。身支度を調えなくては。

その6
我々も、と言っているのはヤブランたち。

その7
では縁側に座って、ゆっくり眺めるとしよう。

その8
縁側の下にも秋海棠。苔緑を背景に赤紫の美しさが際立つ。

その9
少し遠くに目をやれば、そこにはギボウシの群生。その背後に控えるのは半夏生。

その10
ヤブランの大きな株は、遠近感を付けて。

その11
どこからともなく聞こえてくる低い羽音はここだった。

その12

その13

その14
お気に入りの景色を堪能したら次へ移動しよう。

その15
静かだった。しっとりとした湿気を含んだ空気は、微かに苔の香りがする。付けていたグローブを外し、荷物を降ろすと居住まいを直して静かに手を合わせる。ご本尊さまにご挨拶をするのに、先程のおばさんは立ったままだった。神社の参拝じゃあるまいし。
おみくじを開いてじっと見ている若い女の子。邪魔になったが、しばらく待った。すると同じようにじっと座って極楽往生院に向かって手を合わせている男性がいる。彼女らに声を掛けなくてよかった。

その16

その17

その18
雨上がりの苔が余りにも綺麗だったので、思わずたくさんシャッターを切ってしまった。

その19
杉木立とこれから紅葉を迎えるであろう、まだ美しい深い緑のもみじの茂みで、足元はやや暗い。

その20
ここへ来ると、ついやってしまうのが鯉を空中に泳がせること。
ちょっと阿修羅王さん、私で遊ばないで下さいよ(>_<)
まぁまぁ、そう固いことを言わないで(笑)
遊ぶ暇があったら、ちょっと見て欲しいものがあるんですよ
なんですか
お地蔵さまが私に頼み事って、いったい何だろう。

その21
私の向背の左下、その辺がくすぐったいんですが、何か付いていますか 自分では見えないのですよ
そう言われて目を懲らすと、

その22

なんと言うことか、蝉の抜け殻が付いている。それが風に吹かれたりしたときに揺れてくすぐったいのかも知れない。

その23
ああ、そうだったのですか。蝉が私の背中で羽化していたのですね。それは気が付きませんでした。
それでは再び地に戻れるまでそっとしてやりましょう
お地蔵さまはそう言って、また視線を足元に戻した。

その24
静かな朝だった。この続きはまた今度。